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査定によって個人間に格差のつく賃金システムは、日本の従業員のほとんど全階層にひろがっているけれども、欧米ではその適用がなお上層ホワイトカラーにかぎられている。
この第1の区分軸こそが、一つの賃金支払いシステムが労働者個人の競争的な働きぶりやがんばりに報いるという意味で「能力主義的」であるか否かをきめる。
日本より欧米のほうが能力主義的であるという「常識」の不正確なことはいまさら言うまでもあるまい。
4つのタイプではここで、日本の賃金の特徴や変化の動向を考える手がかりとして、右に述べた二つの区分軸を組み合わせた座標をつくってみる。
能力主義的な賃金とは、象限1と2ではなく、象限1と4である。
もっとも、「能力はあるがふさわしい仕事がない」という言い方があるように、「能力」はどちらかといえば潜在的なものと考えられる。
だから厳密には、象限1は実力主義、象限4が最も狭義の能力主義と規定すべきかもしれない。
ともあれ、それぞれの象限に属する賃金システムにいま、とりあえず価値判断や評価をぬきにしたコメントを加えてみよう。
その際、この種のモデル化につきものの現実を厳密に分類しきることの無理、例えば一つの賃金体系が象限の間を相互に乗り入れたりもすること、査定もその行使の程度によって「有無」に二分できないことなどについては、必要なかぎりふれよう。
象限1に属するのは、どれだけ製品を作ったか、どれほど売上高や収益を伸ばしたかなどを評価するシステムである。
仕事の領域が確定されている場合も、それがフレキシブルである場合もある。
しかしいずれにせよ、ここでは人事考課の3つの評価要素、実績・能力・情意(態度、性格)のなかでは実績が、ときには実績のみが重視される。
その点、これはもっとも直接的に労働者のハードワークをそそる賃金形態にほかならないが、他方、公平な実績評価がおこなわれさえすれば、企業への人格の統合を生みやすい情意考課からはもっとも遠ざかりうる支払い方法である。
このドライなシステムが仕事への没入の程度を選びうる労働者の自由を保障するためには、とはいえ、平均的な生活費を稼ぎうるノルマがほどほどの水準に留まっていることが必要だ。
この必要性に労働者間競争の制限を旨とする労働組合が応えると、団体交渉の場で時間当たりの作業量、作業量当たりの単価、業績をはかる査定基準などがゆるやかに、またなかま同士であまり収入格差の出ないように設定されることにもなる。
これまでのイギリス機械工業の出来高給、ドイツの機械金属工業の業績加給などが、あまり労働者を競争的にがんばらせることができなかったのはそのためである。
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